重要伝統的建造物群保存地区の課題2

木曽平沢に隣接する奈良井宿の町並み

奈良井宿は、木曽平沢から自転車で10分ほどで行ける素晴らしい重要伝統的建造物群保存地区です。

ここには、住んでいる人の生業があり、生活感があるゆえに尊い。

しかし、今、ここに大手ゼネコンが入り、町のど真ん中にある江戸寛永年間から続いていた造り酒屋を改造し、高級ゲストハウスをつくっていくとの計画が行政もからんで持ち上がっている、と言う…

隣の地区のことだけに、何も言う権利も資格も私にはありませんが、かつては同じ楢川村。これは奈良井宿にとって、大きな転機を迎えるのではと懸念しています。

何故なら、小さな地区だけに、これ以上の観光化が進めば(現在年間63万人の観光客)、本来の住人の暮らしも文化も破綻するのではと思うからです。

同じく木曽の妻籠宿は、かつて80万人の観光客で賑わった重伝建地区でありましたが、現在は49万人。その内訳はというと外国人観光客が60%をしめ、一方で日本人観光客は減少しているのだという。

この数字と現実を、どうみればいいのか・・・?

9月訪ねた際の妻籠宿

現在の妻籠宿は、江戸時代の町並みを残した素晴らしいところではありますが、そこは作られたロケ地のようでもあり、生活の匂いはありません。そんな観点において、数十年前から奈良井宿と比較されてきました。そして、現在、観光客の入数は逆転しているのです…

『木曽路はすべて山の中である』と、藤村の有名な書籍『夜明け前』の文頭にありますが、日本人が一生に一度は行きたい素朴な木曽路。日本の中でも山深い中山道の静かな原風景を残していくことが、長い目でみて、観光の面からも賢明なことのように私には思えます。

ちなみに、今、私が行きたい所は神無月に、全国から神々が集まってくると言われている神秘的な島根県であります。

旅とは、そんなひとつの物語に惹かれ、行きたくなるものではないのでしょうか…