【木曽の夏と映画『国宝』】

梅雨も明け、いよいよ夏本番を迎えました。
とはいえ、ここ木曽の朝夕は、半袖では寒いと感じるほど。澄んだ空気とひんやりとした風が、都会の蒸し暑さをすっかり忘れさせてくれます。

先日、大学時代の友人が30年ぶりに九州から遊びに来ました。その涼しさに、「まるで別世界だ」と何度も感嘆し、2週間ほど滞在し帰っていきました。

その間、せっかくなので映画『国宝』を観に行きました。映画館は、独占状態で10人たらず、その空気感はたまらなくいい。

この作品は、自らの芸を極めることだけをひたすら追い求めた男の人生と、それを取り巻く人間模様が描かれていました。

恋人も、隠し子として生まれた娘さえも、芸の前ではすべてを捨て去る。
それが決して地位や名誉のためではなく、ただ芸の真髄を追い求めた結果、やがて人間国宝という称号にたどり着いた。その過程のすさまじさと孤独には、言葉を失うほどのものがありました。

同じく芸術の世界に関わる者として、その覚悟と生き様には、心の奥底を激しく揺さぶられました。
演技の力強さ、演出・構成の緻密さも相まって、非常に見応えのある一本でした。

静かな山の町・木曽の夏に、こんなにも重く、美しい映画と出会えたことに、深く感謝しています。

また、私と親交のあった人間国宝になられた先生達の仕事にかけた情熱とそれぞれの人間味あふれる個性をあらためて想い出すことになりました。

人間国宝である加藤孝造先生から頂いた鬼

静寂・・・

厳寒の乗鞍高原にて

新年のブログの更新もままならず、松の内も開けてしまいました。

今日は、今冬最も冷え込んだ朝を迎え、天気も最高!仕事をするのも何なので、車で1時間あまり走らせ、乗鞍高原まできました。

突き刺すような寒さではありましたが、たまには心の洗濯しなくちゃね。

日帰り温泉に入ろうと思いましたが、開館が11時半・・・,バブル最盛期はスキー客でごった返しでしたが、今は閑散と静かなものです。しかし、私にとってこれがいい・・・

中尊寺に奉納

夢と想いは叶うものです。不思議です・・・

10月28日、かねてより中尊寺金色堂建立900年に際し創ってきました金色堂内陣巻柱に描かれていました蒔絵観音菩薩菩薩像『円光仏に想う』と題した額装絵を奉納してきました。

10月28日当日は、藤原秀衡公のご命日で、法要前に中尊寺本堂で奉納、法要。さらには金色堂内で一般客がお参りする中、ガラス張りの中で奉納した額装画を立て、ご焼香させて頂きました。想像もしていなかったご配慮にありがたく感謝するばかりです。金色堂内に入ると、藤原清衡公を始めとした三代のご遺体が安置されているだけに独特な静謐で不思議な空気感を感ずることが出来たことは感動でした。

私のような一介の漆職人が、この国宝第一号に選定され、漆の館としての贅を尽くした最高峰に足を踏み入れること自体がありえないことですが、こうしたことが出来たことに、とても幸せを感じています。

額装画の裏板には、密かに書いた言葉を書き込み封印しました。何を書きしるしたかは内緒。笑

亡くなった父、尊敬する師、また友人、知人、94歳になるまだ健在の母、さらに生きている世界の全ての人間に平穏無事であることを祈るばかりです。

今回で、中尊寺には4回目の参詣となりましたが、様々なご縁が繋がり、こうしてご奉納が叶ったことに、あらためて皆々様に感謝しています。

合掌

幼いインタビュアー

今夏、姪っ子の子供のインタビューを受けたら… 笑

今年の夏休み、東京の姪っ子家族がすでに恒例となっている我が家に5日程滞在していました。その際、夏休みの課題としてまるで“情熱大陸”のようなインタビューを受けました。どうなったか?と連絡すると、下記のようにまとめてくれました。あまりの可愛いさと誤字脱字の多さ、またおじちゃん様に久々に大笑いしました。

今夏の夏休みの課題  まとめ

インタビュアーの彼は中学1年生。中学ではこんな課題(夏休みの研究)が出されていることも驚きでしたが、あんな少しばかりのインタビューで、どこまで書き込めるのか?と心配していましたが、それなりに重要な点を押さえてくれていて何より。『将来新聞記者になったら!』と進言しました。

本当の豊かさとは・・・

私の住む木曽平沢 散歩の際のお気に入りの場所

今朝の信毎(信濃毎日新聞)に、豊かさについて書かれていた。私も、最近ことに時間的に余裕がなくその豊かさについて考えていただけに何だか腑に落ちた。

本当の豊かさとは、資本主義のように費やした時間の対価を云々するのでなく、決して見返りを求めない時間の使い方の中にある。そんなゆったりした時間を楽しむ心の余裕が必要のようだ。それが、ボーっと青い空、白い雲を眺める時間であっていい。と、ごく当たり前のことだが再認識したところです。

さあ、今日も一日頑張ろう!

中尊寺金色堂 特別展

東京国立博物館 特別展

中尊寺金色堂 建立900年を記念して、東京国立博物館で、1月23日から開催されている特別展を観るべく、久々に東京に行って、今帰りのあずさです。

NHKとの初めての試みで、8KCGで中尊寺金色堂の内陣に入っていけたのは、目眩がするかのように真に迫って実に圧巻でした。

NHKで放送されたこともあったのか?入場まで70分あまりの時間待ち。

本格的な平安漆蒔絵の最高峰とも言える内陣巻柱の螺鈿を始めとした蒔絵。先人の凄まじい心意気を感じ、何とも言えない感動でありました。

想う・・・

能登大地震から1ヶ月半・・・いろいろなことがわかってきましたが、4000年に一度という地震に見舞われた能登地方の皆様、また富山新潟の皆様方には、かける言葉も見つかりません。ただただ何とか踏ん張って欲しいと思う。また、冬の寒さも一段落し、陽も長くなりあと少しで春を迎えることが出来ます。それが被災された皆様にとって、少しでも生きる励みになって欲しいと願うばかりです。

すでに、被災された輪島の朝一の皆さんの中には、金沢市金石港で復興の準備を進めているとのお話しを聞いたりすると、どんな目に遭っても、決してへこたれない人間の生きる力を感じ敬服します。そして、今の私に置き換え考えてしまいます。『果たして、今の自分にはそれだけの力があるのだろうか?』と・・・こうしてぬくぬくと生きている私でさえ目眩を感じる今日。世界に目を向けても悲惨な戦争が終結する様子もない。何かが狂っている世界・・・・鬱々とした日々でもある。

今年の年賀状には、何があっても静かに笑っていたい。と、能天気に書きました。

いやーさすがに、今の状況ではありえない。とんでもない・・・ 涙

被災者からの年賀状・・・

昨日、輪島に住む先輩から届いた年賀状

昨日来た年賀状に輪島市に住む大学時代の先輩からのものがありました。あれ!?・・・と、不思議に思い電話をいれましたが、やはり通じませんでした。何時出してくれたのだろう?・・・

書かれている内容を読むと、これまた地震の激しかった珠洲市のキリコの改修をしたとのことで、昨年は大仕事を終えられた満足感で溢れています。

YouTubeで観てみますと、珠洲市の祭りは各町ごとに大きく立派な漆塗りのキリコ(宝燈)を作り、町の中を皆でエッサエッサエッサとねり歩いている様子がうかがえます。それが、先日の地震で家もキリコも珠洲市の住民も大きな被害にあったのでしょう。言葉もありません。

ボラティアも受けいられない状況で、今、出来ることもありません。そんな無力感を感じるばかりですが、他人事ではなく、いつどこで起こってもおかしくない天災であります。せめて出来ることは支援金を送って『何とか踏ん張って!』と背中を押してやるくらいです。

元日早々・・・・令和6年能登半島地震

昨日、元日早々に珍しくブログを更新しおえたと思いきや大地震発生。携帯の警報がけたたましくなると同時に揺れを感じたので急いでテレビをつけました。震度7・・・震源地は輪島市より東の志賀町、マグニチュード7、5だと言う。

輪島は漆器の産地。大学時代の先輩も住んでいるし、私のような漆に携わっている職人も大勢います。現在連絡もつかないし被害の全容もわかりません。

普段漆の仕事をしていて、風呂という漆器を乾かす室に塗った品物を置く際、時にここで地震でも起きたら・・・という不安がよぎることがあります。そんなことが2007年の前回の地震から能登では続いています。珠洲にも旅館をしている古くからの友人も居るし、ホント他人事ではありません。とにかく、この冬の寒い中、命だけでも無事で暖をとれ1日でも早い復旧を祈るばかりです。

昨年から眩暈がするようなことばかり・・・決して安全ではない地球、世界に住んでいることから目を背けてはいけないと考えさせられる年の初めとなりました。

2024年幕開け

2024年の床の間飾り

2024年明けましておめでとうございます。

昨年春、アキレス腱断裂の憂き目に遭い、私個人にとって辛い我慢の年でありました。また世界に目を向ければ、イスラエルとパレスチナの戦争に始まり、地球温暖化による気候変動と眩暈がする問題が山積み・・・全くもって困った事態で目眩さえします。昨年は、何だかそんな解決できないことに鬱々し日々を過ごしているうちに年が暮れ、新たな年を迎えたと言うのが実際です。さて、今年はどうなるのことやら・・・まるで他人事のように言っている自分がそこにいる。

今年は、心機一転!少しは前向きに進んでいきたいと思います。

昨年出来上がった厨子
中尊寺金色堂内陣巻柱に描かれた平安蒔絵による観音菩薩像の再現を試みてみました。詳細については、また・・・