【 腕時計の意匠について 】
この度の腕時計“太陽と月”は、あくまで機械式時計にこだわり、オリエント時計製Cal.48A(最高級キャリバー)の手巻き式ムーブメントを幸運にもわけて頂けたことを前提に、デザインを展開していくことになりました。
* 竜頭位置
オリエント時計の製品では12時方向にパワーリザーブ部(巻き上げ時間等が解るインジケーター)があります。結果3時位置に竜頭がきます。私にしてみると、“太陽と月”を表現しているパワーリザーブ部が12時方向では、蒔絵で描いても対象になってしまい面白くありません。【真の芸術は対象の中にあるのではなく、非対称の中にある!】、それで竜頭位置を30度変えることで、パワーリザーブ部を左右どちらか(11時方向か1時方向)に振ることが出来ます。そこで考えました・・・
パワーリザーブ部を1時方向に持っていき、竜頭位置を4時方向に振ることで、腕時計を左手首に身に着けた時、『体外方向である1時位置から、太陽と月の光パワーが体内に入る!』、これで問題は解消しました。ゆえ巻上げ時の竜頭位置は通常の3時位置ではなく4時位置に決定しました。
*歴史あるローマ数字の美しさ
私の仕事になります漆蒔絵文字盤に関しましては、平安時代から現代までの蒔絵技法を様々な金銀粉を使い5種用いましたが、かつて繊細な数字を蒔絵で表現した腕時計はありませんでした。正確な英字による様々にレタリングされた文字は実に完成された芸術と私には思われます。今回の時計文字盤では、その繊細な歴史ある時計に使われてきましたローマ数字を、文字盤ならではの精密特殊印刷技術に漆を応用し、二つの蒔絵技法(研ぎ出し蒔絵と平蒔絵)で表現。視認性と共に蒔絵ならではの神秘的で、宝飾の輝きを放つ美しい世界を描きたいと願いました。